粉体塗装とは
粉体塗装とは、文字通り粉末状の固体を密着させることで被塗物に塗装を施す方法です。
液状の塗料で被塗物に塗装を施すのが一般的であることを鑑みると、粉体で塗装を施すということはなかなか想像がつきにくいかもしれません。
一般的に塗料として多くの人が思い描く溶剤塗料や水性塗料は、被塗物を着色する役割を持つ『顔料』、塗装の性能を左右する『樹脂』、その性能をより向上させる硬化剤やフィラーといった『添加剤』、それらを混ぜ合わせたときに溶かして希釈させるシンナーなど『溶剤』(水性塗料の場合は水になります)の4要素で構成されます。
そして、被塗物に塗布して溶剤が揮発した際に塗膜が形成されることで、塗装が施されたことになります。
一方、粉体塗装に使用される塗料ではこのうち溶剤が使われません。
残りの3要素である『顔料』と『樹脂』、『添加剤』を細かく粉体に砕くことで塗料とします。
この粉体を被塗物に付着させ、それを焼付乾燥させることで塗膜が形成され塗装が施されたこととなります。
粉体の被塗物への付着には『静電気』が利用されます。被塗物をアースすることでプラスの電気を帯びさせることができます。
そして粉体塗料を専用ガンで噴射してマイナスの電気を帯びさせることで、被塗物に塗料を付着させることができるというメカニズムとなっております。
【溶剤塗装と粉体塗装の違い】
溶剤塗装 | 顔料+十四+添加剤+溶剤 塗装方法:溶剤を希釈を行い、対象に塗装を促す 塗膜の形成:溶剤が揮発した際に塗膜が形成される |
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粉体塗装 | 顔料+樹脂+添加剤 塗装方法:被塗物にアースを施した後専用ガンで粉体を噴射して粉体を付着させる 塗膜の形成:粉体を付着させた後、焼付乾燥を施す |
このように粉体塗装と溶剤塗装の大きな違いは有機溶剤が一切使われないことにあり、環境面にも優しい塗装方法と言うことができます。
環境省が実施した調査では、光化学スモッグの原因の1つと考えられている揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の排出が一番多いのは塗料で32%という結果でした。
粉体塗装だと有機溶剤を一切使用しておりませんのでVOCを排出することもありません。
そのため粉体塗装は環境面への配慮という面で今非常に注目を集めている塗装方法です。
粉体塗装のメリットとは
有限会社 サンワテックが得意としている『粉体塗装』は、一般的な溶剤塗装と異なり塗料に有機溶剤が用いられておりません。
顔料や樹脂、添加剤を細かい粉体に砕き、それを被塗物に噴き付け静電気を利用して付着させ、高温で焼付乾燥を行って塗装を施すことが大きな特徴となります。
これにより、粉体塗装にはどのようなメリットが生まれるのかをご紹介します。
環境・身体にやさしい塗装方法である
粉体塗装のメリットの1つ目は「環境・身体にやさしい塗装方法である」ということが挙げられます。
これは溶剤塗装において顔料や樹脂を溶かすために有機溶剤が、粉体塗装には用いられていないからです。
溶剤塗料に含まれる有機溶剤は揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、以降VOC)にあたります。
このVOCは光化学スモッグの原因となることから大気汚染が懸念されます。
また有機溶剤は水質汚濁の原因にもなりえます。
そのため溶剤塗装は環境面において、悪影響を与えてしまう塗装方法であると言えます。
更にこのVOCは環境だけでなく私たちの健康面にも悪影響を与えます。その具体例として挙げられるのが「シックハウス症候群」です。
溶剤塗料を被塗物に塗布した後、揮発する際に空気中へVOCが放出され、これを人間が吸い込むことでシックハウス症候群のような中毒症状の原因となり、健康面に不調をきたすことになります。
一方で粉体塗装は先述のように、塗料には有機溶剤が一切使用されていないことから塗装を施した際にVOCの発生は限りなくゼロに近い状態に抑えることができます。
そのため粉体塗装は環境および身体の両方にやさしい塗装方法であると言えます。
特に今後の環境対策として、例えば工業用製品の塗装に低公害型の塗装方法が責務として求められた場合には、粉体塗装への切り替えが欠かすことのできなくなることは想像に難くありません。
高い耐久力を有した塗膜
粉体塗装のメリットの2つ目として、「塗膜の耐久力が高い」ということが挙げられます。
これは粉体塗装に用いられる塗料がどのように構成されているかに理由を求めることができます。
まず理由の1つ目として、粉体塗装により形成される塗膜が厚く、強度自体も高いということが挙げられます。
先述の通り、溶剤塗装は有機溶剤を用いて顔料や樹脂などを溶かして塗料とするのに対して、粉体塗装は有機溶剤を一切用いずに顔料や樹脂を粉体に砕いて塗料が構成されます。
つまりこのパウダー状の顔料や樹脂がそのまま塗膜となることので、溶剤塗料に比べて塗膜が厚く形成されるのです。
そのため粉体塗装により形成される塗膜は高い耐久力を持つことになるのです。
では具体的に粉体塗装はどのくらい厚い塗膜を形成することができるのでしょうか。
1回の粉体塗装により形成される塗膜の厚さは最大で150ミクロン、最小でも30ミクロン程度となります。
これは1回の溶剤塗装により形成される塗膜の厚さが約20ミクロンであることを鑑みますと、1回の粉体塗装によって十分高い耐久力を持った塗膜を形成することができるということになります。
更に粉体塗装では粉体を被塗物に噴き付けた後、高温で焼付乾燥を施すことで塗膜が形成されますが、この高温での焼付により樹脂が融解し化学反応が発生します。
これにより高分子ポリマーがネットワーク状の組織を形成することで、塗膜の強度自体も非常に高くなります。
また耐久力の高さは形成される塗膜の厚さだけでなく、塗膜が柔軟性を有していることももう1つの理由と言うことができます。
これにより、屋外のような環境下に置かれた際に被塗物が伸縮を起こしてもそれに追従ができるので、塗膜にひび割れが起きたり剥がれたりすることを防ぐことができます。
このため塗装の寿命が長いと言えます。溶剤塗装ではその追従ができないためにひび割れや剥がれが発生してしまい、特に厳しい環境下における耐久性が粉体塗装に比べると劣ると言うことができます。
このように塗膜の厚さと強度、ならびに塗膜が有している柔軟性から、粉体塗装の塗膜は耐久力が高いと特徴として挙げることができると言えます。
高い防錆性
粉体塗装のメリットの3つ目は、「高い防錆性」を有していることが挙げられます。
粉体塗装はもともと「錆止め塗料」として普及した歴史を持つくらい錆に強いのですが、これは粉体塗装された被塗物が空気に触れにくいからです。
ではどうして粉体塗装された被塗物は空気に触れにくいのでしょうか。
その理由は以下の2点に求めることができます。
まず1点目は耐久性の高さが理由として挙げられます。
先述の通り、粉体塗装が形成する厚い塗膜が空気に触れにくい状態を作り出します。
更にその塗膜は高い柔軟性を持っていることから、温度変化の大きい厳しい環境で被塗物が伸縮を起こしてしまっても、それに追従して対応することができます。
そのため、塗膜がひび割れたり剥がれたりすることも非常に少なく、空気に触れにくいということが言えます。
次に、粉体塗装においては塗装ムラが生じにくく、1回の塗装で厚膜を確保して塗装できることが2点目の理由として挙げることができます。
塗装ムラが少ないことから「ピンホール」と呼ばれる板金加工品の塗布面に生じる小さい穴やエッジ部の塗装が薄い箇所の発生を抑えることができます。
そのため粉体塗装においては、空気に触れにくい状態で塗装を仕上げることができると言うことができます。
以上のように、耐久性の高さと塗装ムラが生じにくいことが、粉体塗装のもつ「高い防錆性」を生み出しているのです。
コストパフォーマンスの高さ
粉体塗装のメリットの4つ目は、そのコストパフォーマンスの高さが挙げることができます。
この理由は次の3点に求めることができます。
まず1点目は、粉体塗装により形成された塗膜は耐久性と防錆性に富んでいるため、再塗装が必要となることが殆どないためです。
そのため溶剤塗装の場合と比べて、ランニングコストを削減することも可能になります。
次に2点目は粉体塗装の塗料は回収して再利用することができるからです。
これにより塗料のロスを抑えることができます。
なぜ回収及び再利用が可能かというと、粉体塗装の塗料には有機溶剤が用いられていないため、塗料成分が揮発して変質することがないからです。
3点目は塗装ライン設備の小型化が容易だからです。
これは、粉体塗装には有機溶剤が用いられないのでPRTR法届出対象物質や危険物に非該当であるため、また焼付乾燥も溶剤塗料に比べて高温かつ短時間で行うためです。
このように粉体塗装では、溶剤塗料では受ける法律の制約を受けず、更にその塗装方法からも設備をコンパクトにすることが可能になっております。
以上のように、粉体塗装はコスト面でも魅力のある塗装方法だと言うことができます。
粉体塗装のデメリットとは
このように4つのメリットを有する粉体塗装ですが、一方でデメリットとしては次の1つを挙げることができます。
薄い膜厚は対応不可
粉体塗装はその塗料の構成から薄い厚みの塗膜を形成することはできません。
対応できる厚みの最小値は30ミクロン程度となりますので、それより薄い塗膜が必要である場合は溶剤塗装のような液状の塗料を使用する塗装方法を採らざるを得ません。